十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第2章 2
ほんの軽く触れるだけだと…それだけだなんて考えてた僕は、後頭部を掴まれ、強引に引き寄せられてから漸く、自分の考えが甘かったことに気付いた。
「しょ…く、ん…」
キュッと閉じていた唇を押し開くようにして、翔くんの舌先が僕のに滑り込んでくる。
押し返そうにも、それから唇を離そうにも、僕よりも翔くんの力の方が強くて…
おまけにあっという間に体勢が逆転してしまったとなれば、もう僕に成すすべは…ない。
唯一、僕のバスローブの襟元を割って入って来る手は止められたけど、それだって手首を掴まれて呆気なく終わった。
本当はさ、頭では分かってたんだ、このままじゃいけないって。
このまま…なんて、僕は良くたって翔くんは無理だろうし、何より翔くんの思いに応えられないのが、自分でも辛かった。
でもさ、たとえ心がそうであっても、身体は正直でさ…
受けるだけのキスが深くなり、身体を覆っていたバスローブから、少しずつ肌が外気に晒されて行くにつれ、所在なくシーツを握った僕の手の震えは酷くなって行く。
そして、バスタオル越しに翔くんの興奮状態がどれ程なのかを感じた瞬間、固く閉じていた瞼の裏に浮かんだのは…
鼻息が荒くて、やたらと口臭もキツくて、ニキビ面した、あの変態野郎の顔だった。
そう…、僕はあの日のトラウマから。ずっと抜け出せずにいたんだ。