十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
少しだけ重くなった左手を持ち上げ、ぼんやりとした視界にかざしてみる。
「ねぇ、これ…って…」
「あ、もしかして気に入らなかった…とか?」
「ううん、そんなことない…。ちょっとビックリしちゃって…」
僕の左手薬指に嵌っていたのは、パッと見何の変哲もない、シンプルなシルバーのリングなんだけど、良く見ると僕達共通のイニシャルでもある〝S〟の文字が彫ってあって、小さいけど赤と青の石が埋め込まれている。
そしてそれは、翔くんの左手薬指にも嵌っている。
「あ、あの…、えっと、その…」
なんて言葉を返したら良いのか分からず、ただただオロオロする僕の横で、翔くんが少しだけ真剣な顔をする。
「あのさ、別に嫌なら断ってくれて良いんだけどさ…」
「う、うん…」
いつになく歯切れが悪い翔くんに、何故だか僕まで緊張してきちゃう。
「俺は、この先もずっと智くんと、その…なんつーか…その…」
「う、うん…」
「多分、こんなこと言うの、後にも先にも智くんにだけ…だと思うんだけどさ…」
「う…ん…」
何だか焦れったくもあるんだけど、翔くんが凄く言葉を選んでいるのが分かる。
だから僕も、次に翔くんの口から発せられる言葉を、息を詰めてジッと待った。
なのにさ…