十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
「なあ、俺達、もう一度やり直せない?」
「え…?」
それまでとは打って変わって、真剣な表情と口調で言われて、一瞬僕の時が止まった。
翔くんともう一度…なんて、そりゃ考えたこともあったし、今だって全く諦めてるわけじゃない。
でもいざとなると、どう答えて良いのか分かんない。
だって、僕はもう翔くんが知ってる〝僕〟とは違うと思うから…
案外潔癖なとこのある翔くんだから、翔くん以外の人が触れた僕を、簡単に受け入れられる筈ないもん。
答えに迷い、視線すら合わせられない僕を、翔くんは真っ直ぐに見つめてくる。
別に、答えを急かしてるわけじゃないだろうけど、その目があまりにも真剣過ぎて、何だか逃げ出したくなる。
もう何からも逃げないって決めた筈なのに…
「ごめん、いきなり過ぎた…よな?」
言いながら、僕のほっぺたを包んでいた手が、ゆっくりと離れて行く。
すると、さっきまで暖かだった僕のほっぺたが、急に寒くなったような気がして…
その時思ったんだ。
この手を離したくない、って。
二度と離さず、僕だけの物にしたい、って。
僕はスっと息を吸い込むと、それを全部吐き出してから、それまでずっと俯いたままだった顔を上げた。
「ぼ、僕は、今でも翔くんが好き。翔くんが求めてくれるなら、もう一度…って思う。でも僕は…」
一度は止まった筈の涙が溢れ、再び僕のほっぺたを濡らした。