十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
「もしかして、父ちゃんのお墓にも…?」
さっきからずっと僕の鼻を擽る甘い香り…
月命日に母ちゃんとお墓参りに行った時にも、今と同じ匂いがした。
「ああ、うん。本来なら、智くんを連れて行くって決めた時点で、智くんのご両親にはちゃんと挨拶するべきだったんだけど、あの時は時間に追われてたし、それに…」
「それに…なに?」
「ちゃんとしたかった…っていうかさ…、将来のことも考えた上で、挨拶したかった…ってのがあって…」
ねぇ、それって…僕との未来を考えてた、ってことなの?
「どうして? だって翔くん、そんなこと一言も…」
僕の記憶にある限りでは、翔くんは一度だって〝好きだ〟とか〝愛してる〟って言ってくれたことも無かった。
なのに将来のことなんて…
「なあ、俺がそんな甘い言葉言える性格だと思う?」
「それはそう…だけど…」
知ってるよ?
翔くんの性格なら、誰よりも知ってる。
ブレスレット一つ買うのだって、散々渋ってた翔くんだもん。
でも僕は言って欲しかった。
潤さんやニノに言われるよりも、翔くんにずっと言って欲しかった。
そしたら僕はこんなにも遠回りしなくても済んだし、寄り道だってすることは無かった。
「ごめん…、全部俺のせいだ」
やるせなさと、知らなかったとはいえ、翔くんを裏切ってしまったことへの罪悪感から涙が止まらない僕の肩を、翔くんの腕が抱き寄せた。