十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
目の前が真っ暗になって、それから胸の鼓動がやたらと煩くて、震える指には僅かな痺れしか感じない。
「知ってたなら、どうして…」
いくら異国の地に居たからって、連絡の一つくらい出来た筈なのに、どうして…
「本当は直ぐにでも駆けつけて、誤解だって言いたかった。でもタイミングが悪かったっていうか、会社でトラブっちゃってさ…」
「そ、それでも連絡くらい出来たんじゃ…」
僕とは無理でも、ニノとなら…
「したよ。何度もした。でも智くん出なかったじゃん」
「あっ…」
言われて僕は思い出した。
事故の後、僕のスマホには知らない番号からの着信が、何件…ううん、何十件も残されていた。
そして、あの写真を目にした直後にも、同じ番号からの着信はあった。
僕はてっきりイタズラだと思って出なかったけど、まさかそれが翔くんからだったなんて…
「え、でも番号…」
「ああ、それは海外あるあるって言うか…、空港着いた途端にスリに遭うわ、預けた荷物は無くなるわで、散々でさ…」
自嘲気味に笑った翔くんが、僕との距離を少しだけ詰める。
「その後も、帰ろうと思っても、中々仕事との折り合いが付かなくて…」
普通に会社勤めをしたことがない僕にとっては、翔くんの仕事がどれ程大変だったかは、想像することすら出来ないけど、翔くんも翔くんで、色々あったことだけは分かった。