十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
何度唾を飲み込んでみても、乾いた喉は全く潤わないのに、視界だけはどんどん潤んで行く。
「だって、何? 理由があんならちゃんと言えよ」
変わってないな…
強制的に僕の言葉を引き出そうとするの、全然変わってない。
「だ、だから…、彼氏さんに申し訳ないってゆうか…」
「はあ?」
「そ、それに…さ、ご対面…なんてなったら、僕何て挨拶したら良いか分かんないしさ…」
〝元彼の智です〟なんてさ、言われるのも言うのも、自分が惨めになるだけだもん。
「ちょっと待て…、何言ってんの?」
「だから…、嫌なの!」
耐えられるつもりでいた。
翔くんのどんな姿を見ても、絶対耐えられるって自信があった。
でもいざその場面を前にしたら、自信なんて欠片も無くなって…
ただただ虚しさだけが胸に積もって行く。
「何が…嫌なわけ?」
僕はゆっくり翔くんの方を振り返ると、きっとぐちゃぐちゃになった泣き顔を、両方の腕で拭った。
「僕は、翔くんが僕以外の人といるのも、僕以外の人に笑いかけるのも、僕以外の人と…」
そこまで言って、急に言葉に詰まった僕は、一瞬目の前が真っ暗になって、足元がグランと揺れるような感覚に襲われた。
倒れる…
そう思った瞬間、僕の身体は翔くんの厚い胸と、少しだけ逞しくなった腕に包まれていた。
「相変わらずバカだね」って。