十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
「やっぱり僕、帰るよ」
その方が良い…ってゆうか、そうするべきだ。
僕は踵を返し、エントランスから出ようと、たった今来たばかりの道を引き返した。
翔くんが追って来る気配はない。
ほらね、やっぱり翔くんだって気まずいんじゃん。
翔くんがそうなら、僕はもっとだよ。
僕は、翔くんが僕以外の人と、幸せに暮らしてる姿なんて、見たくないから…
翔くんに会えたことは、素直に嬉しかった。
でもこんな複雑な気持ちになるなら、会わなきゃ良かったかも…
自分の考えの甘さに、胸をキュッと締め付けられながら自動ドアの前に立ったその時…
「なあ、さっきから何なの?」
翔くんの、ちょっとだけ怒ったような声が、だだっ広いエントランスに響いた。
「俺に会いたかったんじゃねぇの?」
そして、ゆっくりと近付いて来る足音。
「なのに何で急に、〝帰る〟とかさ…。意味分かんねぇんだけど」
意味分かんないのは、僕の方だよ。
「嬉しく無かったのかよ」
「う、嬉しかったよ…?」
うん、それは本音。
「じゃあ何で…」
「だ、だって…」
言いたくないのに、言わなきゃいけないの…、正直キツい。
でも…
僕はすっと息を吸い込み、握っていた手にチカラをこめた。