十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第2章 2
肌触りの良いバスローブを着て、湯気の充満したバスルームを出る。
勿論、下着はちゃんと着けている。
「髪、ちゃんと乾かせよ?」
顔はテレビに向けたまま、缶を傾けながら翔くんが言う。
ってゆうか…
「ねぇ、それ僕が飲みたかったヤツじゃん」
「そうだったっけ?」
「そうだよ…」
最近発売されたばかりで、ずっと気になってて、でもタイミングがなくって、やっと飲めるって思ったのに…
「ごめんて…。ちゃんと残しといてやるから、ドライヤーしちゃいな?」
「本当に? 本当に本当だよ? 絶対だよ?」
「分かったから、しつこいっつーの」
僕は備え付けのドレッサーの前に座ると、ドライヤーを手に、熱風を頭に吹きかけた。
普段ドライヤーなんてかけなくて、洗いざらしが殆どなのにな…
「相変わらず下手くそだな…」
鏡越しに僕を見下ろす翔くんと目が合う。
「貸してみ?」
そう言った翔くんの顔が、いつもの数倍優しくて…
「お願い…します」
僕は素直にドライヤーを翔くんに差し出した。
翔くんの、決して骨張っていない、けど男らしい指と、ドライヤーから吐き出される熱風が、僕の濡れた髪を掻き分け地肌に触れる。
たったそれだけのことなのに、こんなにもドキドキするのは、どうしてなの?