十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
「さ………ん」
誰かに名前を呼ばれた気がして、僕は瞼をゆっくり持ち上げた。
でもハッキリ目が覚めてないのと、徐々に強くなって行く陽射しのせいで、人影はあるものの逆行で良く見えない。
あ、もしかして僕、夢見てるとか?
だったらもう少し…
僕は再び瞼を閉じた。
だって夢じゃなきゃ、こんなの絶対変だもん。
そう、全部夢なんだ…
そうでも思わないと、今のこの状況を理解出来ないし、もし目を覚ました時、目の前に何も無かったとしても、夢だと思って諦めもつく。
寧ろその方が良いかも。
でも何でだろ…
自然と目頭が熱くなって、僕は両腕で顔を覆った。
きっと疲れてるんだ。
こっちに来てから殆ど休みなんて無かったし、きっと疲れが溜まり過ぎて、とうとうおかしくなっちゃったんだ。
だからこんな変な夢を見るんだ。
僕は自分に言い聞かせた。
でも僕が夢だと思おうとした状況は、全然夢なんかじゃなくて…
「相変わらず泣き虫なんだな?」
聞き覚えのある声に言われ、堪えきれなくなった涙が、凄い勢いで頬を流れる。
それでもまだ僕は夢だと思いたくて…
大量の涙を流しながら、僕は瞼を更に固く閉じた。
だって…
だってこんなの…
信じらんないんだもん…