十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
つい数分前まで浮かれていた気持ちは、すっかり沈んでいて…
僕は口を尖らせたまま、すっかり馴染みになったベンチに腰を下ろした。
その時、車から降りようともしない潤さんのスマホが鳴った。
どうせ仕事の電話なんだろうな…
そんな僕の予想は大当たりで…
一分も経たずに切った電話の後、潤さんが僕を呼んだ。
…ってゆうか、車からも降りないんだもんな…
つまんないの…
「何? 仕事?」
「まぁな…」
僕は潤さんの返事を待って、助手席に乗り込もう…としたけど、突然ガチャン…とドアロックがされた。
え、何なに?
そして戸惑う僕の目の前で窓がウィーンと開き…
「用が済んだら迎えに来るから、それまで待ってろ」
滅多にない滅茶苦茶笑顔の潤さんが言った。
「え、え、ちょっと、どうゆう…」
言いかけた僕の言葉は、エンジン音に見事掻き消され…
僕をその場に残したまま、メタリックパープルのスポーツカーは、爆音と共に走り去った。
「マジ…か…」
普段は危ないからって、一人で遊びに行くことすら許してくれないのに、こんな所に僕を一人残して行くなんて…
マジでなんなの?
僕は再びベンチに腰を下ろすと、そこに仰向けになった。
すると、早起きしたせいか、横になった途端に睡魔が襲って来て、僕は珍しく柔らかな陽射しを感じながら瞼を閉じた。