十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第12章 12
「実はな…」
僕の隣に腰を下ろし、潤さんが真剣な顔をする。
「昨日お前の話を聞いてから、日本で懇意にしている探偵に、彼のことについて調べさせたんだが…」
「た、探偵…?」
やっぱ潤さんクラスになると、やること違い過ぎて、ちょっと着いていけないかも…
「それ…で…?」
「日本国内に限ったことだから、確実とは言えないが、恐らく彼で間違いないだろう」
「じゃあやっぱり…」
ジェシーの言ってた、毎日パンを買いに来る男って、翔くんで間違いない…ってこと?
「で、でも翔くんはロスに…」
転勤先はロスだって、あの時確かに言ってた。
だから僕は、翔くんはずっとロスにいるもんだと思ってた。
もっとも、あれから十年も経ってるんだから、色々状況も変わってるだろうけど…
「ああ、確かに彼はロスに転勤になってはいるが、五年程向こうで勤めて会社は辞めているらしい」
「そう…なんだ…?」
「その後の消息は不明…ということだったが、彼の親しい友人の話によれば、海外移住がどうとか…」
「それが…ここ、ってこと?」
潤さんが無言で頷く。
「そっか…、そうなんだね」
勿論、潤さんの話が全て確実なものではないことは分かってる。
でも、僕達が別れた後、翔くんがどんな風に生きて来たのか…、それをほんの少しだけでも知れたことが、僕はとても嬉しかった。