十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第11章 11
そんな相変わらずの状況が続く中、ジェシーが不思議なことを言った。
いや、不思議な…は流石に言い過ぎかもだけど、とにかくジェシーにとってはそれが凄く不思議だったらしく…
最近になって出来た唯一の常連客が、毎回僕が休憩(という名の昼寝だけど…)に入ると同時に現れては、大量にパンを買い込んで行くと…
それも毎日のように。
それだけなら何ら不思議な話でもないし、寧ろ売上に繋がってるんだから、大歓迎な話でもあるんだけど、ジェシーが〝変〟だと感じたのは、その人が毎回受け取ったレシートの裏に、いくつかの数字を書き、カウンターに残して行ったこと…らしい。
「そのレシートは?」
僕が問い詰めると、ジェシーは首を横に振って、「捨てた」と言った。
どうやらジェシーは、その人をストーカーか何かと思ったらしく、僕の目に触れる前に捨てたんだ、と。
仕方ないことだとは思う。
ここは日本じゃないし、いくら治安は割と良い方だとは言っても、日本に比べたら危険は確かに多い。
でもさ…
「日本人…だったんでしょ?」
「多分…」
「じゃあ…」
同じ日本人なら安心…そんなのは僕の偏見から来る思い込みに過ぎなくて…
見た目が日本人でも、育った環境で人はいくらでも変わるんだと言われて漸く、僕はジェシーの言葉の意味を理解した。