十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第11章 11
でもさ、やっぱ何でも上手く行く…なんてこと有り得ないよね。
夕方までキッチンカーを出してても、初日に売れたのは僅かに三個。
それも、あんまり売れないからって、終わりがけに値段を下げてからのことで、実際にはガソリン代にもならないくらいの売上しか出来ず…
作業場へと戻る道すがら、僕達が会話を交わすことは殆ど無かった。
原因は分かってた。
だって値段もそんなに高くないし、味だって…自分で言うのもなんだけど、全然悪くは無い。
だとしたら考えられるのは、人気(ひとけ)がゼロに等しい〝場所〟だけだ。
でも僕はあの場所がやっぱり好きだし、誰に何と言われたって、あの場所でパンを売り続けたい。
寧ろ、あの場所以外には考えられない。
勿論、遊びじゃないってことも分かってたし、僕なりにどうしたら売れるか…とかさ、色々考えてはみた。
僕だけではどうにもならない時には、本当は嫌だったけど、潤さんに意見だって求めた。
でも結局、僕は誰に何を言われたとしても、あの場所以外にキッチンカーを出す気にはなれなくて…
潤さんはそんな僕に、「相変わらず頑固だな」と言ったけど、仕方ないじゃん?
僕は自他共に認める〝頑固者〟なんだから。