十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第11章 11
「ここでOK?」
ジェシーがキッチンカーを車を停め、運転席の窓から顔を出して辺りを見回す。
「うん」
「でも、ここ…」
僕は車を降りると、後方のドアからコンテナ部分に乗り込み、キッチンスペースのシャッターを開けた。
オーブンの電源を入れ、暖まった頃合を見て、発酵を済ませたパン生地をオーブンに入れた。
暫くすると、狭いキッチンカーの中にはパンの焼ける香ばし匂いが満ち始め…
「すっごく良い匂いだね」
キッチンカーの前でスタンド看板を設置していたジェシーが、鼻をクンクンとさせた。
その姿がまるで犬みたいで、僕はクスッとしてしまう。
「でもサトシ、本当にここでOKなの?」
「どうして?」
「だってココ何も無い。人もいない」
「そうだね…」
ジェシーの言う通り、そこは特別観光地ってわけでもないし、民家っぽいのがポツポツと建ってるだけで、後は白いビーチと青い海が広がってるだけの、どちらかと言えば殺風景な場所だ。
でもぼげこの場所を選んだのには、ちゃんとした理由がある。
「ここさ、僕の思い出の場所なんだ」
「思い…出?」
僕はジェシーにペットボトルを差し出すと、ベンチに腰を下ろした。
照り付ける日差しが強くて、しっとりと汗をかき始めた肌に、海風が気持ち良い。