十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第11章 11
翌朝、僕は潤さんが起きるのを待たずに、一人作業場に向かおう…と思ったけど、やっぱり辞めた。
だって、そんなに遠くはなかったけど、ハッキリ道覚えてないし、迷子にでもなったら一生帰って来れなくなりそうだったんだもん。
おかげで動き出すのが午後からになってしまったけど、それも仕方ないよね。
もっとも、潤さん的には観光でもって言ったけど、それはしっかりお断りした。
僕としては、大好きな海で遊べただけで、十分観光した気分だったから。
欲を言えば、釣りが出来たら最高だったんだけどね?
僕はムギタを辞める際に、麦田社長から貰った真新しい白衣に着替え、早速パン生地を捏ね始めた。
ムギタで教わったことを思い出しながら、水やら温度やら色々調節して、発酵時間の調整もして…
何度か失敗を繰り返し、漸く〝これだ〟って思えるパンが焼けた頃には、もう一週間が過ぎていた。
勿論…というか、潤さんはその間も辛抱強く僕に付き合ってくれて、グルメ評論家みたくアドバイスをくれたりとかして…
漸くキッチンカーを出せるようになったのは、それから更に一週間を過ぎた頃だった。
「行ってきます」
「ああ、行ってこい」
僕は潤さんに見送られながら、自慢のパンを積み込んだキッチンカーを出発させた。
あ、運転するのはジェシーなんだけどね?