十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第11章 11
「じゃあ、行ってくる」
いつもより少し早く起きた朝、僕はキッチンに立つ母ちゃんの背中に言った。
「松本さんに迷惑かけるんじゃないわよ?」
僕の方を振り返ることなく母ちゃんが言う。
ってゆうかさ、こんな時まで僕より潤さんのこと心配する?
まあ…、分からなくもないけどね?
僕は、母ちゃんが空港まで送るって言ったのを、母ちゃんの気持ちを考えることなく断った。
だって、またあの時みたいに、僕のせいで大切な人を亡くしたくなかったから。
それはニノや雅紀さんに対しても同じで、二人共見送るって言ってくれたけど、僕は同じ理由で断った。
二人共凄く寂しそうな顔してたし、本音を言えば僕だって寂しい。
でもさ、大切な人を亡くすことの方が、うんと怖かったんだもん。
「父ちゃんには挨拶したの?」
「うん、したよ」
「そ、じゃあ…向こう着いたら連絡しなさいよ?」
「分かってるよ」
相変わらず母ちゃんは心配性だな。
もう子供じゃないのに…
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕は普段と何ら変わりのない、寧ろほんの少しだけ清々しい気持ちで玄関のドアを開けた。
そして、門を出たところで一旦立ち止まると、僕は長年住み慣れた家に向かって頭を下げた。
別に、もう帰って来ないってわけじゃないのに…