十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第10章 10
ムギタで働かせて貰えることが決まった僕は、その週のうちに雅紀さんの店を辞めた…ってゆうより、〝辞めさせられた〟って言った方が正しいのかもしれない。
本当はもうちょっと…って気がしなくもなかったけど、雅紀さんが決めたことだから仕方ないよね。
ってゆうか、僕よりも周りの人達の方が、妙に張り切っちゃってるのは僕の気のせい?
だって母ちゃんは急にホームベーカリー買ってくるし、オーブンだって新しくなったし…
ニノなんて、飯代が浮く…とか、良く分かんないこと言うしさ…
潤さんは潤さんで、ボクが自分のお見せを出す時には、自分がスポンサーになるとか言い出すし…
まだ実際に働いてもないのに、笑っちゃうよね?
でも不思議なことに、皆が僕にどれだけ期待していても、僕がそれをプレッシャーに感じることは、一つもなかった。
寧ろ、僕的にはヤル気が湧いて来る…ってゆうかさ。
おかしな話なんだけどね?
僕は、ムギタへの初出勤の前日、母ちゃんと一緒に父ちゃんの墓参りに行った。
僕が夢に向かって一歩を踏み出したことを、父ちゃんに報告するためだ。
そして、墓石を前にした時、線香の燃え残りと、花が供えられていることに、ちょっとした違和感を感じて首を傾げた。
だって、線香も花も、何日かは経ってるっぽいけど、そこそこ新しい物のように見えたから…