十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第10章 10
その後、潤さんは自身の体験も交えながら、色んな話をしてくれて…
傍から見たら何の不安もなく、平坦で、常に安定した道を歩んで来たと思っていた潤さんにも、今の地位を築くまでに、僕が知らないだけで沢山の苦労があったことを知った。
潤さんだけじゃない、雅紀さんにしたってそうだ。
何の苦労もせず夢を叶えることなんて、出来っこないんだって。
だからかな、僕は少しだけ自分が恥ずかしくなった。
勿論、僕だって楽に夢を叶えられるとは思ってなかったけど…
「楽な道だって、ちゃんとあるんだけどな」って潤さんは言った。
でもその道を、自分はあえて選ぶことはしなかったって。
僕はそんな潤さんに「どうして?」と疑問を投げかけた。
だってさ、みんなが皆そうじゃないとは思うけど、出来ることなら苦労なんてしたくないじゃん?
そしたら潤さんは「さあな、何でだろうな?」って言って、苦笑いをした。
それからごみ箱の中の資料を指さした。
「選ぶのは智だよ」って。
「ちゃんとした学校行って、専門的な知識を身に付けるのも良いし、俺みたいに現場で働きながら、確実に技術を身に着けるか…」
って言われても、何が僕に合っているのか、正直良く分からない。
でも一つ言えるのは…
「僕、勉強嫌い…」
これだけはハッキリ…なんなら、自信を持って言える。