十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第10章 10
え、僕、何か変なこと言った?
そう思った時にはもう既に遅くて…
「人数がどうとか、誰も聞いてないけど…。っていうか、あと一人は誰だよ」
「え、あ、あの、そ、それはその…」
潤さんの額にみるみる皺が寄って、呆れ顔がちょっぴり怒ったような顔になる。
でもそれはほんの一瞬のことで…
「ったく、相変わらず面白いね、智は。ま、そういうとこに、俺も惚れたわけなんだけどさ」
潤さんはそう言って僕の額にデコピンをした。
それも思いっきり強く…
「あのな、俺が聞きたかったのは、パン屋になりたいって言ったけど、今までパンを自分で作ったことがあるか、ってこと」
あ、なんだ、そうゆうこと?
もぉ、それならそうハッキリ言ってくれれば良いのに。
おかげで恥ずかしい思いしちゃったじゃん。
「んと、それならゼロ…かな」
子供の頃からパンの焼ける匂いが好きで、大人になったらパン屋になりたいって、ずっと思ってきた。
けど、実際に自分で作ったり…ってことは一度もない。
「そっか、ないのか…」
笑われるって思った。
何の知識も経験もなく、ただ匂いが好きだからってパン屋になりたいってのは、あまりにも安直過ぎるんじゃないか、って。
でも、雅紀さんの時もそうだったけど、潤さんも僕の夢を、決して茶化したりすることはなかった。