十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第10章 10
カラッと店のドアを開けると、ちょっぴり懐かしさを感じさせる、ラーメン屋独特の匂いが、僕の鼻とお腹を擽った。
「どうしたの、こんな時間に。いつもより早くない?」
雅紀さんがスープの番をしながら、僕を振り返る。
「うん、ちょっと話があってさ…」
「なになに、良い話?」
「うーん、どっちだろ…」
僕にとっては良い話なのかもしれないけど、雅紀さんにとっては、正直どっちなのかは分からない。
「あ、ちょっと待って?」
「忙しかったら後でも…」
「違う違う。もし悪い話だったらさ、それなりに覚悟しとかなきゃって思ってさ」
そう言って雅紀さんは、胸に両手を宛て、深呼吸を何度か繰り返した。
…ってゆうか、雅紀さんてやっぱり面白い人だ。
こんな人の傍にいたら、ニノもきっと楽しいだろうな。
「OK、話聞こうか」
「うん…」
雅紀さんが厨房から出て、一番奥のカウンター席に座った。
頭に巻いていたタオルを取ると、思ったより長い前髪がサラッと降りて来て、一瞬ドキッとしてしまう。
勿論、雅紀さんに対して恋愛感情があるわけでもないし、雅紀さんとどうこうなりたいわけでもないけどね?
「実は…さ、ずっと考えてたことがあって…さ」
「うんうん…」
「僕ね…、あのね…」
僕は雅紀さんに、自分のした決断を、ゆっくり、一つ一つ言葉を選びながら話した。