十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第9章 9
「智さ、俺に〝翔くん〟って言ったんだよ?」
「嘘だよ…」
いくら無意識だったとしても、ニノを翔くんと間違えることなんて、絶対にない。
そう思っていた…ってゆうか、思おうとしていた。
「やっぱさ、忘れらんないんでしょ?」
「そんなことは…」
ない…って言いかけた口を、ニノの手が塞いだ。
「俺思うんだけどさ、智見てるとすげぇムカつくし、イライラするんだよ。人の気持ちなんてまるっきり無視して、昔の恋人のことばっか考えてたりしてさ…」
僕がニノの立場でも、きっと同じように思ったかもしれない。
僕も実際、こんな自分にいい加減嫌気がさして来てるから。
「潤さんのことだってそう。あんな良い人泣かせてさ、最低だって思った」
分かってるよ。
分かってるし、心の底から申し訳ないことしたって思ってるよ。
だって、心の中に誰がいても構わない…なんてさ、僕だったら絶対に言えないし、別の人を想ってるのに愛することなんて、僕には出来ないもん。
だから…潤さんがそうゆう人だったから、僕は付き合おうと思ったし、本気で潤さんのことを愛そうとも思ったんだから。
「その上、俺とも…さ…」
「それはだって…」
「分かってるよ、俺のためだろ?」
言われて、僕はこくりと頷いた。