十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第9章 9
ニノのまっすぐに見下ろして来る視線と、首に触れた指先の冷たさに、すっかり動けなくなってしまった僕。
そしたらさ、ニノが急に吹き出して…
「え、な、何…?」
何が起きたのか分からず、ひたすら戸惑う僕から、ニノがスっと離れて行く。
そして…
「冗談だよ。智があんまり真剣になるから、ちょっと揶揄っただけ」
何それ…
「もう遅いし、そろそろ帰るか…」
再び伝票を手に取ったニノは、今度こそ部屋を出て行ってしまい…
僕はその後を追った。
カラオケルームの入ったビルから出ると、すっかり夜になっていて…
腰を摩りながら、なのにスタスタと先を歩くニノを、僕は小走りで追いかけた。
でも、ニノのアパートまで数メートルってところで、急にニノが足を止めた。
「智ん家、あっちでしょ?」
「うん、そう…だけど…」
「ここで良いから、もう帰れよ」
「そう…だね、もう遅いし、帰るね」
僕はニノの背中に手を振ってから踵を返し、歩を進めた…けど、数歩進んで足を止めた。
「ねぇ、ニノがさ、もし本当に僕を滅茶苦茶にしたい、って思ってるなら、して良いよ?」
潤さんは僕を目一杯愛してくれたけど、それでも僕の中から翔くんを消し去ることは出来なかった。
でもニノなら…