十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第9章 9
曲が終わり、一瞬だけど狭い部屋の中に静寂の時間が訪れた。
ニノはグラスに残っていたジュースを飲み干すと、伝票を手に席を立とうとした。
「待って…」
僕はニノを引き止めた。
「話、終わってないんでしょ?」って。
でもニノは首を横に振った。
絶対まだ言いたいことがあるくせに…
僕はニノの手を引いて再び座らせると、今度は僕の方から、ニノをじっと見つめた。
「あのさ、ちゃんと言ってくれないと僕、そんな頭良くないから分かんないよ」
どうして「来るな」なんて言うのか、その理由をちゃんと…
「僕、そんなに迷惑だった?」
「違う、そうじゃなくて… 」
「じやあ何?」
「特に理由なんてないよ」
嘘ばっか…
ニノが、何の理由もなく、僕に「来るな」なんて言わないこと、僕はちゃんと知ってるよ?
なのにどうして?
滅多に人に対して腹を立てることなんてない僕だけど、流石にちょっと怒れてくるのは、ニノの考えが分かっていながら、分からないフリをしなきゃいけないからだ。
「ねぇ、ちゃんと理由言って?」
僕はもう一度同じ質問を繰り返した。
瞬間、僕の身体はソファに押し倒され、ニノが僕の上に覆い被さっていた。