十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第9章 9
「どう…したの? 歌わないの?」
僕が知ってる限り、ニノの好きな曲だし、ニノが最も得意とする曲なのに…
「疲れ…ちゃった?」
久しぶりの外出だし、立て続けに何曲も歌ってたし…
「もう帰る?」
フロントからの時間確認の連絡は、多分まだまだ先だと思うけど…
僕はニノがナニを思っているのか分からずに、ただ首を傾げた。
そしたらニノがマイクをテーブルに置いて、僕をじっと見つめながら言ったんだ、「もう来ないで」って。
言われてる意味が分からず、「えっ?」と聞き返した僕に、ニノは更に続けた。
「俺さ、やっぱり智のこと好きなんだよ」
うん、それは僕も知ってるよ。
「でも智はさ、今でもずっと櫻井先輩のことが好きで…。だから諦めなきゃなんないのも、ちゃんと分かってる」
ニノの眉間に深い皺が寄り、表情が苦しげに歪められる。
僕には、ニノが何を思って、何を言おうとしているのか、なんとなくだけど分かるような気がした。
でも敢えて口には出さず、まっすぐに見つめてくる視線を避けることもなく、僕はニノが発する次の言葉を待ち、じっと耳を傾け続けた。
寧ろ、僕にはそうすることしか出来なかった。