十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第9章 9
僕はニノをカラオケに誘った。
カラオケなら別に手を使う必要もないし、ずっと座ってれば良いだけだしって。
何より、ニノは元々歌うのが好きし、少しでもストレス発散になれば良いと思ってのことだった。
ニノもその提案には思いのほか乗り気で、指定された部屋に入るなり、マイクを握りしめ、一人コンサートを始めた。
たまに僕にマイクを譲ってくれたりもしたけど、それも数える程のことで、マイクは殆どニノの手の中にあった。
でもそれで良かった。
だって、僕が知ってる歌は、殆どが翔くんが好きで、無理矢理聞かされ続けた挙句、自然に覚えてしまった曲ばっかなんだもん。
そんなのさ、歌ったりしたらさ、絶対翔くんのこと思い出しちゃうし、また泣いちゃうかもしれないし…
ニノに余計なストレスを与えるだけになってしまいそうなんだもん。
だからこれで良いんだ。
僕はニノの横に座り、ニノの歌に合わせて手拍子をしたり、たまに合いの手を入れたりして、二人しかいない場を、可能な限り盛り上げることに徹した。
でも、アップテンポな曲から一転、バラード調の曲になった途端、空気が一変した。
さっきまでテレビ画面を見ていたニノの視線が、僕に…僕だけに向けられた。