十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第2章 2
一頻りブランコで遊んで、鉄錆がツンと臭う手を洗う。
ハンカチなんか持ってないから、着ていたシャツで拭こうとしたら、翔くんが自分のハンカチを貸してくれた。
「ハンカチくらい持って歩けよな」って。
フリーターの身ではあるけど、〝一応〟社会人なんだから、身だしなみとして持つのは当然なのかもしれないけど、別にいいじゃん?
だって、僕には翔くんていう、〝超〟出来た彼氏がいるんだからさ。
「それからスマホ」
「あ、うん、ありがとう」
翔くんからスマホを受け取った僕は、スマホを定位置でもある尻ポケットに突っ込んだ。
「智くんさあ、前にスマホ落としたことあったでしょ?」
「ああ、うん…」
随分前の事だけど…
それにあれは…
「あの時は仕方ないじゃん、変態野郎が急にガバッて来たから…」
ビックリしゃって、それで…
「まあ、そうなんだけどさ、もうあん時みたいな思いしたくないっつーか…」
逆光でハッキリとは見えなかったけど、翔くんの表情が一瞬険しくなったのが分かった。
そうだよね、あの時の出来事は、僕は勿論だけど、翔くんにとっても、それからニノにとっても、あまり良い思い出じゃないもんね?
僕、あの時の翔くんの顔、今でもハッキリ覚えてるよ?
僕のために本気で怒って、本気で心配して泣きそうになってたっけ。