十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
何も考えずに雅紀さんが注文した料理は、お腹がはち切れそうになっても全然減る気配がなく…
「もう無理…」
訴える僕の目の前では、雅紀さんが黙々と食べ続けている。
「良くそんなに食べれるね?」
痩せの大食いって言うけど、雅紀さんのためにあるみたいな言葉だ。
「ねぇ、雅紀さんはどうなの?」
「ん、何が?」
好物の麻婆豆腐をレンゲで掬い、口に運びながら、雅紀さんが首を傾げる。
「だからさ、ニノのこと好きなんでしょ?」
「うん、好きだけど?」
それがどうしたと言わんばかりに、平然と言ってのける雅紀さんに、僕は質問を続けた。
「でもニノはさ…」
僕のことを…
「知ってるよ? ずっと智のことが好きだってこともね」
「平気…なの?」
さっきだって、僕に届いたニノからのLINE見ても、普通に笑ってた。
もし僕だったら、あんな風に笑っていられないもん。
「平気か平気じゃないかって言われたら…」
「言われたら…?」
「やっぱり平気じゃないかもしれないかな」
やっぱそうだよね。
自分が好きな人が、他の人に〝愛してる〟なんて言ってるの見ちゃったら、普通でいられる方がおかしいもん。
雅紀さんが普通の感覚の持ち主だって分かって、ちょっと安心したかも。