十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
ニノの病室を後にした僕達は、同じフロアに入院しているニノの親父さんのお見舞いもしてから、漸く薬品の匂いが満ちた建物を出た。
雅紀さんの両手には、ニノが食べきれないからと持たされた、お菓子やら果物やらが詰まった袋が下がっていて…
「なんか、これじゃ何しに来たか分かんないね?」
「ほんとだね…」
僕達は苦笑を浮かべた顔を見合わせた。
「でも元気そうで良かったよ」
「うん。ほんと、良かった…」
嘘じゃなくて、本心から僕はそう思った。
「だいたい雅紀さんが大袈裟なんだよ」
「それは悪かったってば…」
子供みたいに唇を尖らせる雅紀さん。
でも雅紀さんが大袈裟にしてくれたおかげで、僕もニノも仲直り出来たんだし、それを考えたら…
「ありがとね…」
「ん、何が?」
「別に…」
僕はドアロックが解除されたと同時に助手席に乗り込み、シートベルトを締めた。
「メシでも食って帰る?」
荷物を後部シートに置き、少し遅れて運転席に乗り込んだ雅紀さんが、シートベルトをカチッと締めると同時に言った。
「うーん、どうしようかな…」
何も言わずに家飛び出して来ちゃったから、きっと母ちゃん心配してるだろうし、それに母ちゃんのサンダル履いて来ちゃったし…