十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
「悪かったよ…。だからもう泣かないでよ」
ニノが自由のきく手で僕の頭をそっと撫でる。
ってゆうか、僕泣いてないし。
「それから、この間のことも…ごめん」
「もう良いよ、済んだことだし…」
実際、あの時のことはあまり思い出したくない。
そりゃさ、ちょっと前までは怒ってたし、思い出す度にムカついたりもしてたけど、でもあんな怖いニノの顔、出来ることならもう思い出したくないんだ。
でも、
「智が良くても、俺は全然良くないから」
ニノはそれじゃ気が済まないみたいで…
「俺さ、智が俺のこと、弟みたいに思ってて、恋愛感情とかこれっぽっちも無いこと、ちゃんと分かってんのに、あん時はどうしても止めらんなくて…」
僕は、ニノがポツリポツリ語るのを、特に頷くでもなく、ただニノの薄っぺらな胸に顔を埋めて聞いていた。
「後から滅茶苦茶後悔すんだろうなって思ってたら、やっぱり滅茶苦茶後悔しちゃって…」
僕とニノは、そこまで性格が似てるわけじゃないけど、変なとこ似てたりするから、ニノが後悔した気持ち、僕にもちょっとだけ分かる。
「だから智が何回も電話くれたり、LINEくれたりしても、出られなかった」
そう…だったんだね。
もし、僕がニノの立場だったら…もしかしたらニノと同じことしてたかもしれない。