十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第8章 8
「斗子さん、なんて?」
僕が聞くと、潤さんは少しだけ笑って、シートに背中を預けた。
「捨てたって言っておきながら、実はしっかりとってあったなんて、大嘘ついたバチが当たったんだ、って」
「なんか、斗子さんらしいね」
「まあな…」
一度しか会ったことないし、LINEでのやり取りだって数える程しかないけど、なんとなくその時の状況が目に浮かんでくる。
「実際、俺もその通りだと思ってるよ」
「え…?」
「本当に捨ててたら、こんな風にはなってなかったかもしれないし、もしかしたら、もっと違う未来があったのかもしれないって思ってな」
今更何を言っても後の祭りだけど、そう言って潤さんは手で目元を覆った。
きっと、〝後の祭り〟なんて簡単な言葉では済まないくらい、潤さんの心中は複雑なんだと思う。
それきり言葉を発しなくなってしまった潤さんに、どんな言葉をかけて良いのか分からず…
僕はポケットの中でシャランと音を立てるネックレスを握った。
「僕ね、潤さんが好きだよ」
嘘じゃない、潤さんのことは好き。
「潤さんのこと、翔くんを超えるくらい、好きになろうと思った」
それも嘘じゃないし、本気でそう思ってたし、そうなろうともした。
でも結局僕には出来なかった。
翔くん以上に、誰かを好きになることが…