十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第7章 7
「あんた今日仕事休み取ってるんじゃないの?」
「え…?」
玄関ドアを開け、家を出る直前に声をかけられた僕は、そこで暫く動きを止めた。
「そうだ…っけ?」
首を傾げた僕に、母ちゃんが呆れたように溜息を落とす。
「やだ、この子ったら、父ちゃんの月命日まで忘れちゃったの?」
「あ…」
言われて漸く、僕は今日が父ちゃんの月命日だったことを思い出した。
父ちゃんが事故で死んでから、毎月欠かさずにしてることなのに、そんな大事なこと忘れちゃうなんて…
他人で、しかも父ちゃんに会ったことすらない雅紀さんでさえ、毎月忘れずに休みにしてくれてるのに。
僕は開けたドアを閉め、せっかく履いた靴を脱ぎ…それから、一度は諦めた朝ご飯を前に座った。
その間も母ちゃんは休むことなく動いていて…
普段より念入りにメイクしたり、父ちゃんに「似合う」って言われた服に着替えたりして、まるでデートにでも行くみたいだ。
でも、それくらい母ちゃんにとって父ちゃんは、死んで何年も経った今でも大好きで、大切な人…ってことなんだろうな。
ちょっと羨ましい気もするけど、それって実際どうなんだろうとも思う。
寂しくないのかな、って…