十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第7章 7
僕は無言でニノにティッシュを差し出した。
でも僕に背中を向けてしまったニノは受け取ってはくれなくて…
「…れよ…」
「え…?」
泣いているのか、良く聞き取れず聞き返し、震える肩に触れた僕の手を、ニノが振り払った。
「もういいから帰れって…」
「でも…」
ニノが僕にしてくれたように、僕だって泣いてるニノを一人には出来ないよ。
僕は一度は振り払われた手を、再びニノの肩にかけた。
「と、とりあえずさ、怪我の手当だけでもしないと…。ね?」
そんなに強く当たったわけじゃないとは思うけど、もし痕が残ったりしたらいけないし…
でもニノは頑なで…
再度僕の手を振り払うと、今度は部屋を飛び出し、小さなシンクの前に立った。
僕は咄嗟に追いかけ、肩を震わせるニノを抱きしめようと思った。
火に油を注ぐだけかもしれないってことは、僕にだって十分分かってるけど、そうせずにはいられなかった。
でも出来なかった。
「これ以上俺を惨めにさせんな…」って、涙声でそう言われてしまったら、もうそれ以上動くことも、言葉をかけることすらも出来なくて…
僕はたった一言「ごめん…」とだけ言ってニノを横を通り、玄関で靴を履いた。
その時チラッとニノの方を振り返ったけど、ニノは顔は背けられたままだった。