十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第7章 7
「ニ…ノ…?」
僕を見下ろすニノの目が、これまで見たことがないくらい冷たくて…
長い付き合いの中で、初めてニノを怖いと思った瞬間だった。
「智は良いよね、気楽で…」
「き、気楽って…、僕は別に…」
僕はニノをおしかえそうと、思い切り腕を突っ張ったけど、細い身体のどこにこんな力があったんだろうと思うくらい、ニノ力は強くて…
「ね、ねぇ…、痛い…」
布団に押し付けられた肩の痛みを訴えるけど、ニノは全く聞き入れてくれる様子もなくて…
それどころか、今度は僕の両の手首を掴んで布団に押し付けた。
「痛い? でもさ、俺だって痛いんだよ? 智の口から櫻井先輩や潤さんの名前聞く度、ズキズキズキズキしてさ、痛くてたまんないんだよ、ココがさ…」
自分の胸を拳で叩き、苦しげに顔を歪めるニノ。
でも僕にはそれが何を意味するのか分からなくて…
だって…
だってニノは…
「雅紀さんと…」
ニノと雅紀さんの関係は、ただの店主と客の関係には、とても見えない。
付き合ってこそいないけど、それに近い関係だと、ずっと思っていた。
でも違った。
「俺が好きなのは智、お前だよ」
何度も何度も…、繰り返し聞かされて来た言葉を、このタイミングでまた聞くことになるなんて、思わなかったな…