十年・愛 〜あの場所で、もう一度君と…〜【気象系BL】
第7章 7
お互いに黙りこくったまま、ジリジリとした時間が流れる。
時計の針が時を刻む音だけがやたらと大きく響いて、ただでさえ悪いい心地に拍車をかける。
「忘れようとしたもん。潤さんと付き合ったら、翔くんのこと、全部忘れられると思ったんだもん」
それが例えば潤さんを利用することになっても。
「それって…、すげぇ狡くない?」
ニノの口調に、明らかな怒気の色が浮かぶ。
「潤さんの優しさに甘えてさ…、潤さんの気持ち弄んでたってことだろ? 狡いよ…」
分かってるよ。
僕だって自分のしたことが、どれだけ酷いことかなんて、僕だって分かってる。
「じゃあさ、どうしたら良かったの? 僕は今でも翔くんを忘れられないし、翔くんの事が好きで好きで…」
堪らないのに…
「なんかさ、智って昔っからそうなんだよね…」
「え…?」
「ちょつと都合が悪くなると、すぐ人に甘えてさ…、マジでそういうとこ狡いと思うわ」
「そんなこと…」
ニノに言われなくても分かってる…って、否定しようとニノの方を振り返った瞬間、僕の視界が暗くなって…
「お前さあ、人の気持ち…っていうか、俺の気持ち、少しでも考えたことあんの?」
僕の身体は、敷きっぱなしのニノの布団の上に押し倒されていた。