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【呪術廻戦】伏黒・狗巻 何となく続く短編集

第5章 勉強も訓練も


勉強も訓練も(霧)

走るのは、嫌いではない。

運動オンチの自覚があるが、一定のリズムを刻むようなランニングは、楽しいと思える。唯一、続けられる運動だ。草っ原の凪と恵を横目に、ひとりパタパタと走り回る。

息が上がって苦しくなり、足も上がらなくなった頃、組み敷かれた凪を見て思わず声が出た。同い年の男の子に負ける凪は、見た事がない。見た目以上にすごい人なんだと、まだ余裕がありそうな恵を見る。

しかし、彼の白い犬が、一目散に向かってきたから、霧は慌てた。後ずさった足が何もないところに引っかかって、尻もちをつく。勢い良く迫る犬が霧の周りをぐるぐると回ってから、頬を舐め、その額でぐいぐいと肩を押す。されるがまま立ち上がると、嬉しそうに走り去ってゆく犬を追いかけるしかない。

「待って!」

余りにも速い犬に呼びかけるが、一瞬振り返っただけで、また走り出してしまった。楽しそうな様子が憎い。より一層、足回りのスピードが上がる犬に諦めかけた時、急に方向転換して、あらぬ方に駆け出してしまった。何事かと視線で追った先には、棘が、両手を広げて待ち構えている。

「狗巻先輩、訓練中です」

犬に舐め回されながら、犬をこねくり回す棘に、恵が呆れ果てて文句を言う。棘の横に投げ出されている、真新しい教科書が哀れだ。

棘は、息も絶え絶えに追いかけてきた霧にも、両手を広げている。まるで犬扱いだが、疲れ果てた身体は限界で、彼に飛び込んだ。犬同様にこねくり回されて、ぐったりと寄りかかる。

「もう、一歩も、歩けま、せん…」

ゼエゼエと吐き出す息と一緒に、限界を訴えた。「明日も走れよ」と当たり前のように言い放つ恵に返事をするが、「ふぇ」と口から出た音が、息なのか声なのか分からなかった。明日は、たぶん、全身筋肉痛だ。
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