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【呪術廻戦】伏黒・狗巻 何となく続く短編集

第5章 勉強も訓練も


勉強も訓練も(伏黒恵)

凪の手筋は、恵が今まで出会った人の誰よりも、しなやかで、速い。一族の中で無敗を誇るのも頷ける。身のこなしが、一般人のそれではない。身体の小ささを逆手に取って視界から消えたり、重さや力に頼らず、手数を増やしている。

それに負ける恵ではないが、先輩たちの重い打撃とは一味違う戦法を相手にするのが、楽しい。所謂、味変だ。死角からの回し蹴りをスレスレで躱わすスリルが堪らない。

関節を決めて、凪を組み敷いた時、「わぁ…」という緊張感のない歓声に気が抜ける。鈍臭さのあまり、走らせるしか選択肢がなかった霧だ。その間抜けさを意にも介さず、凪は上がった息をゆっくりと整えてながら、身体を起こした。

「当たったと、思ったんだけどな…」

「軸足の体重移動が見えた。踏み込みがもう少し深かったら、当たってたかもな」

「当たっても痛くねえけど」という言葉は飲み込んだ。恵を吹っ飛ばす威力の蹴りと、比べてはいけない。もそもそとトラックを歩く霧に「サボるなよ」と声をかけると、薄らぼんやりとした「はーい」という返事が帰ってきた。

脱力感と共にため息を吐いてから、玉犬を差し向ける。甘やかすなと言い聞かせてから「かわいいね」と笑っている凪にも飛び火した。

「お前が甘やかすから、ああなってんだろ」

こちらにも甘やかすなと念を押しながら、玉犬に驚いて尻もちをついている霧を顎で示すと、薄らぼんやりを真似た「はーい」が帰ってきた。呪術師になれるかどうかは別として、教科書が用意されていたということは、五条はそのつもりだろう。自分の身くらい、自分で守れるようになって貰いたい。

「伏黒くん、もう一回」

立ち上がるだけなのに、引っ張って貰おうと、凪は恵に手を伸ばしてくる。こういう甘えたは歓迎だなと、恵は彼女の手を握って引っ張り上げた。
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