第30章 王様の最後
「あ、王様が来た!」
黒曜石で異世界へ行けるという情報は、ピグリンの中では秘匿されているものらしかった。
まぁ、ピグリンがオーバーワールドに行けば、ゾンピグになってしまうから当たり前なのかもしれないが。
なので俺の見送りに来たピグリンはドラゴン討伐へ向かったわずかな兵たちと、エヌとその仲間たち、そして、あの子どもだったサングラスピグリンだけだった。
「よく見ると小さいんだな」
と俺がサングラスピグリンに言うと、うるさいなぁと言いながら、これからデカくなるんだし、と虚勢を張った。
「まぁ、デカくなれよ」
「そりゃあまぁな!」
ピグリンはサングラスをズラしてじっとこちらを見上げた。わずかに背が低いのは、まだ完全に成人したピグリンではないだろうということを思わせた。
「じゃあ、行ってくるよ」
俺はネザーゲート前に立った。ついこの間までよく分かったピグリンの表情が、ここに来てあまりよく分からなくなっていた。もしかして俺、ここに居続けていたらピグリンになりかけていたんじゃないのか? とよく分からない考えを振り払って仲間を見回すと、どれがゴエイくんか分からなくなって俺は一瞬焦った。