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俺、ピグリン王になったみたいです

第29章 そして


「兵長っ」
 後ろから声。
 振り向くと、クロスが敬礼してそこに立っていた。
「ああ、クロスか。どうした」
「黒曜石の準備が出来ました」
「そうか」ゴエイくんは俺に目を向けた。「では、行きましょうか」
「分かった」
 俺は頷き、歩き出そうとした。
「ちょっと待つっスちょっと待つっス!」
 と唐突に現れたのはエヌだった。エヌは急いで来たのか、ぜぇぜぇと息を切らしながら待ってくれと何度も言葉を繰り返した。
「どうした、エヌ」
「おんりー兄貴に見せたいものがあるんス!」
「俺に……?」
 ゴエイくんの問いに答えながら、エヌは俺にそう言った。見せたいものがなんなのか分からず首を傾げると、エヌが指を突き出したので俺たちはもう一度外へ視線を向けた。
 そこから見えたのは。
 ドォーン……! ドォーン……!
 すごく大きな花火だった。
「これは……エヌ、あれはなんだ?」
 ピグリンたちからしたら初めて見るものなのか、ゴエイくんが物珍しげにエヌに聞いた。エヌは得意そうに笑った。
「へっへー! あれは、TNTとロケット花火を混ぜたド派手花火っス!」ネーミングセンスはアレだが、エヌはスラスラと喋り続けた。「兄貴、宴に来ないって言うから、みんなで急いで作ったんスよ! 兄貴の感謝の印として!」
「俺に?」
「そうっス!」
 そうだったんだ。俺はそう呟いて花火へ視線を戻した。
 確かに、本来見る花火よりカラフルではないし、音はうるさいし、名前の通り派手な花火だったが、何もない赤い霧の世界が照らされているみたいで、とても綺麗だった。
「ありがとう、エヌ」
「いえいえっス!」
「ゴエイくんもクロスも、ありがとう」
「いえ」
「こちらこそありがとうやで、王様♪」
 俺はもう少しだけ、花火を見ていくことにした。
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