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俺、ピグリン王になったみたいです

第29章 そして


「休憩中ですか」
 そこに声を掛けてきたのは、振り向かなくても分かった。ゴエイくんだ。
「まぁ、そんなところ」
 ゴエイくんを一瞥してから遠くへ視線を投げた。いつものゲームの中では見たことのないバイオームや冒険に思いを馳せ、大変な道のりだったが、今思えばちょっと楽しかったかも、なんて俺は振り返っていた。
「そろそろ、元の世界に帰りますよね」
「えっ」
 急に言われた言葉に俺はゴエイくんへ視線を向けた。ゴエイくんはどっちもつかないような表情をしていて、こちらへ見つめ返してきた。
「何も言わなくて構いません。貴方は、向こうの世界から来たのですから」とゴエイくんは話続ける。「兵たちに、黒曜石を集めるように指示を出しました。本当は、もっと早くこうすればよかったと思ったのですが……」
「いや、いいよ。そっちも余裕なかったんだろうし」
「……貴方なら、そう言ってくれると思っていました」
 妙な沈黙。抑揚のないゴエイくんの言葉から、心境はますます読みづらくなった。
 俺は黙って再び地平線を眺めた。遠くはネザー特有の赤い霧のようなものが見え、暗かった。
「あのあと、どうしたの?」
 黙っているのもなんか気まずくて俺は質問を投げてみた。ゴエイくんはすぐに応えた。
「あのドラゴンの城でのことですか?」
「うん」
「あの時は……」ゴエイくんはゆっくりと話す。「正直、ピグリンとピグリンブルートではやはり私たちの方が不利でした。ですが、仲間は負けずに戦ってくれて……簡潔に言うと、ほぼ互角だったんです」
「え、じゃあ……」
「その時、クロスが撤退と命じたのです」
「クロスが?」
 クロスはゴエイくんの部下のはずだ。なぜクロスが、と考えた時にふと、自分がクロスに出した指示のことを思い出した。
「もしかして、TNT?」
「はい。クロスは、貴方が仕掛けたTNTに、クロスボウで着火したのです」
 その後のことはご想像の通り、ドラゴンの城は崩壊し、ゴエイくんたちは爆風に巻き込まれないようにさっさと出てきたということらしい。
「そういうことなら、俺一人で片付けた方がよかったかもな……」
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