第28章 最終決戦(後編)
ガンッ、と鈍い音がした。
俺が何をしたのかようやく気が付いたドラゴンは、唸りながら刺さった矢を自ら引き抜いたが、もう遅い。
「うぉおおおおお……! 俺が……俺様が、こんな毒矢でやられていい訳が……っ!」
あの僅かな矢にどれ程毒が塗ってあったのか、ドラゴンはその場で暴れたり喚いたりしたが先程の素早さはなかった。俺は巻き込まれないように急いで離れようとしたが、ドラゴンは見逃してくれなかった。
「貴様だけでも捻り潰してやる……!」
「……っ?!」
振り向いた先には既にドラゴンの鉤爪のある前足が迫っていた。バケツは今は空だ。弓矢を構える時間はない。剣で迎え撃ってもこの手の大きさなら跳ね返す力はないだろう。
なら、多少の痛みを覚悟してエリトラで飛ぶしかない。
俺が花火を取り出した瞬間、声が飛んだ。
「王様っ!!!!」
よく通る明るい声だった。
この声、誰だったけと考えるより早く、目の前のドラゴンの手はばたりと力なく倒れた。見るとドラゴンの前足に、三本もの矢が撃ち込まれている。
「忌々しい……こんな矢で俺様が……この俺様が……」
地面に横になったままのドラゴンの口がそうブツブツ言葉を放ちながらやがて聞こえなくなった。黒光りするようなドラゴンの眼差しから生気が消え、その内動きもぱたりと止まった。
何が起きたのかと目を上げると、複数人のピグリンたちがゾロゾロと駆け足でこちらにやって来ているのが見えた。その集団の先頭にいる一人のピグリンが、俺の姿を見るなり駆けつけてきてこう言った。
「無事で何よりです、おんりー」
ゴエイくんだった。