第25章 帰還
見ると兵の装備は全身身につけてはいるが、どれもボロボロで戦闘の数々を思わせた。俺は周りで留まるピグリンたちを見回してこう訊ねた。
「みんなはもう避難したの?」
「はい。今国にいるのは我ら兵たちだけで……」
「グゥオオオオオオ!!!!」
会話を裂くように響いた雄叫び。
「ブルートドラゴンです……!」
と兵が叫んだのも束の間、黒い何かが全ての視界を遮り、次にはバキバキと低い天井が抉られる音がした。
「きゃあああ!!」
同時に、ピグリンの悲鳴が聞こえてハッとした。
てっきり、地面が崩れたか何かなのだろうと思った。だが、見やった先に広がる光景は想像以上に残酷なものだった。
黒くて大きな鉤爪が、子どもを抱えたピグリンごと鷲掴みにして連れ出していたのだ。
俺は考えるより先に体が動いていた。我武者羅に剣を振るが、あと一歩足りなかった。
連れ去られるピグリン親子を追いかけて広いところに出ると、黒い鉤爪の主がようやく見えた。
全身黒いドラゴンがそこにいた。
金属が擦れ合うような音がする黒い鱗の体をしたドラゴンは、鋭い目付きで掴んだピグリン親子を見、それから俺を見下ろした。
パッと見はエンドラと同じように見えるが、違うところはピグリンブルートのように装備をしているところだった。金の装飾が施された茶色くくすんだ服にも見える装備を身につけて。