第21章 絶望の瞬間
見張りや戦闘や防衛騎士団と違って特定のエリアを持たない彼らは、こうして唐突にドラゴンの周りに現れて圧倒的実力で敵も味方もひれ伏せた桁違いのピグリンブルートだった。
そして、猛攻騎士団員の恐ろしいことは、洗脳を受けずにして自らドラゴンの手下になると率先したピグリンブルートたちで構成されていた。なのでドラゴンに絶対的忠実を誓っているのだ。まず、こちら側に寝返ることはない。
さらに、猛攻騎士団は金ではなく、ネザライトの武器や装備をしており、片手には盾を常備していた。エリトラはやはり全員身につけている。
「ブルートドラゴンはどこに行ったんや!」
沈黙の間合いを切り裂いたのは、反対方向からドラゴンの間に潜入してきたクロスだった。クロスは既に矢をつがえており、いつでも戦闘が出来る状態だ。
「本当なら黙って置くところだろうが……」敵対するピグリンブルートが話し出す。「今ここで言ってもどうせもう間に合わないから教えてやる。ドラゴン様はピグリン城を潰しに行ったのさ!」
「何っ……!」
ゴエイくんが隣で半歩前に出た。俺の頭の中では、最悪なシナリオが出来ようとして背中が凍りつく思いだった。
「ピグリンブルートを差し出せば、ドラゴンは城に手を出さないんじゃなかったのか!」
ゴエイくんがさらに問いただした。猛攻騎士団員らはまたゲラゲラと笑い出した。
「仲間を売っておいてまだそんなキレイごとを言ってるのか?」敵は話す。「ドラゴン様は俺たちを売った国を潰しに行っただけだぜ?」
ギャハハハハ、と笑う猛攻騎士団のピグリンブルートたち。洗脳されないでそんな態度が取れるなんて正気の沙汰ではない。否、元々こういうピグリンブルートもいたのだろう。
「だったら、ワタシたちの国も……?」
震えるような声で、クロスは俺たちへ視線を投げた。遠いので表情は見えないが、少なくとも恐怖で顔が引きつっているだろうことは想像が出来た。
「国に戻るぞ!」
「させるかよ!」
ゴエイくんが決断した時、目にも止まらないスピードで何かが飛び込んできた。