第20章 作戦始動
間もなく、防衛騎士団エリア側がざわつき始めた。近くで身を潜めて隠れている俺たちの方まで言葉は聞こえてはこないが、次にはドタドタと走り去る音が聞こえ、チャンスは今だとゴエイくんと頷き合った。
通路へ飛び出すと、そこには一体のピグリンブルートしかいなかった。そのピグリンブルートは盾を持っており、エヌからあらかじめ聞いていた通り「防衛騎士団」の特徴であるということはすぐに分かった。
「援護しますっ」
背後に構えていたエヌの部下がそう言ってクロスボウから矢を放った。盾を持っている防衛騎士団にガムシャラに剣を振るうのはご法度だったからだ。まず矢で盾を使わせ、反撃の瞬間に斬りかかるのだ。
「ブゥアッ……?!」
悲鳴を上げ、防衛騎士団のピグリンブルートはデスポーンした。すかさず俺達は走り出した。
「こちらです!」
城内の暗記もしっかりしてきたらしいゴエイくんを先頭に俺は走った。思ったよりも軽いネザライトの剣はまだまだ頑丈そうだが、盾がないのは心許ない。敵が盾を持っているのに、なぜ自分にはないのか。さっきのピグリンブルートは落とさなかったし、この世界は何モードなんだろうとどうでもいいことを考えた。
エヌがどういう騒ぎを起こしたのかは分からないが、すっかり防衛騎士団エリアは手薄になっていて、ばったり敵と出くわすことがあっても簡単に斬り伏せることが出来て楽だった。
別に自分が剣道をやっていた訳でもないのに、剣は自分の手によく馴染み、動きやすいのも理由だったかもしれない。
「この先です……!」
ゴエイくんが通路の先へ目を向けてからこちらに言った。俺も多少は地図を覚えてきたから分かった。そこから先が、ブルートドラゴンがいる場所だ。
見ると金で出来た二枚の扉があり、下の感圧板を踏むと開くだろうものがあった。金のドアなんて初めて見たが、意外にもあっさりとしたデザインだった。
「……行こう」
俺は覚悟を決めて頷いた。左手にはマグマバケツを用意し、右手には剣、肩に弓を引っ掛けていて、いくらかもらった矢の入った矢立を背負い直す。
「行きましょう」
ゴエイくんも頷きを返し、エヌの部下も各々頷いてくれた。
俺たちは金の扉の感圧板を踏んだ……。