第17章 蓄えと練習
とゴエイくんが言っていたのは隣の部屋にある大量のTNTのことだった。
こんなに沢山TNTがあるならドラゴンも一気に倒せそうなのだが、エヌが実は……とこう話し出した。
「TNTを使いこなせる仲間が俺以外いないんスよ。猛攻騎士団なら使えるんスけどね」
「……え?」
たった今、最悪なことを聞いた気がする。俺はエヌにもう一度聞いてみた。
「TNTを使いこなすって、猛攻騎士団が?」
「そうなんス」
「俺たちが今から行くドラゴンの周りには猛攻騎士団がいるんだよね?」
「そうっスね」
軽くも重くもない調子でエヌにそう返される。つまり、今から討伐しに行くドラゴンの護衛隊はTNTを使ってくるということだ。
「ちなみになんだけど……猛攻騎士団はエリトラつけてるの?」
「つけてるっス」
つけてるっスって。エリトラつけてるのは当たり前なんですよって言われるこの世界が怖いよ。もしかしてここ、鬼畜世界……?
「エリトラと花火の準備もこちらにあるっス」
とエヌが言って後ろにあるチェストを開けた。それならまだ戦いやすいかも、と俺がエリトラと花火を受け取ると、クロスが興味津々そうに近付いて来た。
「エリトラって難しいん? TNTも使ったことはないんやけど」
そうか、こちらはTNTの扱いどころか、エリトラも使ったことがないピグリン兵だった。今から練習するには、時間も場所もないだろう。
「うーん、TNTについては作戦があるんだけど……」俺はゆっくりと話を切り出した。「エリトラはちょっと練習しないとかも」
「じゃあ、こっちの練習所使うっスか?」
とエヌが指し示した方向には、縦長に伸びたなんの変哲もない大きな部屋。丁度、隠し部屋の下にある部屋みたいで、覗き込むとターゲットブロックがあるので、普段は射的練習所になっているみたいだ。
「ここって、他の騎士団も使うんじゃないの?」
「いえ、ここは見張り騎士団員専用の練習所っスから」
「では行きましょう」
俺がエヌの説明に答え兼ねている時にそう言ったのはゴエイくんだった。ゴエイくんはこんな感じでいつもやる気に満ち溢れている気がした。きっと、ゴエイくんは誰よりもドラゴンを倒したいと思っているはずだ。
「行こうか」
「はい」
俺たちは射的練習所へ下りて行った。