第16章 反乱の策略
そうして、俺とピグリン兵九人は、ピグリンブルート見張り騎士団長とその仲間五人……五人というのは少ないように見えるが、彼らは全員エリトラを身につけていてそれなりに強そうには見えた……に案内されてどこかの隠し通路に辿り着いた。
「こちらが、我らがドラゴンや他の騎士団員に見つからないように蓄えていた武器や食料っス」
と見張り騎士団長は部屋にたんまりとある金装備や金の武器、ありがたいことに豚肉までの貯蓄を見せてくれたが、その前にちょっと待ってと話を遮った。
「あのー、名前呼びづらいんだけど……」
ずっと思っていたことなのだが、俺は見張り騎士団長に視線を投げてそう言った。
「そうっスか?」
名前がないことに慣れている様子の見張り騎士団長がきょとんとする。そこにゴエイくんが言葉を付け足してくれた。
「私たちには名前がつけられているのだ。私にはゴエイくん。そしてこっちはクロスだ」
「どーも♪」
ゴエイくんに紹介されてクロスは片手を上げて挨拶をする。見張り騎士団長はふむと唸り声をあげた。
「しかし……急に名前について言われても、騎士団長以外に別に呼び名は……」
「なら、名付けてもらえばいい」
そうでしょう? と言うかのようにゴエイくんに視線を向けられて俺は一瞬身動ぎしたが、言い出しっぺは自分である。ここは自分が考えようと名前のない騎士団長へ目を向けた。
騎士団長は、どこからどう見たってよく見るあのピグリンブルートとなんら変わらない。変わっていることと言えば、俺と戦った時に黒い服がボロボロになっていることと、戦闘中にTNTを投げてきたことくらいだ。
TNTといえば、あのメンバーのことが頭に浮かぶが……。
いや、ここであのメンバーの名前にするのは面倒なことになりそうだ。俺はかなり考えてから名前をこう提案した。
「エヌってのはどう? TNT使ってたし」
「ありがとうっス、おんりー兄貴! 俺、これからエヌって名乗るっス!」
なんの躊躇いもなく受け入れられた俺の考えた安直な名前で、見張り騎士団長はエヌと呼ぶことになった。
「ではエヌよ。こっちの部屋にあるTNTについて聞いてもいいか?」
「お、いいっスよ、ゴエイ兄貴!」
名前があることで、どこか親近感が湧く気がして、俺は確実に近付いているだろう結末に、気付かないフリをした。
