第10章 クロス
その後、助けた子どもピグリンを家まで送る護衛として、俺が引き連れていたピグリン兵の内二人が国に戻ることとなった。
「俺はファントムの皮膜が手に入るまで帰らないからな!」
なんて意地を張っていた子どもピグリンだったが、俺とクロスボウ兵が一緒に倒した時にドロップしたファントムの皮膜を渡すと、仕方ないと言いながら渋々国へと帰って行った。
最初、ファントムを倒してくれたクロスボウ兵が子どもピグリンの護衛をすると言っていたのだが、あの命中率の高さは自分のドラゴン討伐について来て欲しいと言ってみると、あっさり受け入れて別の護衛に代えてもらった。
「あの、嬉しいです。ワタシをドラゴン討伐隊に連れて行ってもらって」
とクロスボウ兵は言った。どこか聞いたことのあるような、独特なイントネーションがある女性っぽい声をしたピグリンだった。
「いや、助けてもらったのはこっちだし」
名前は、と聞こうとして口をつぐんだ。そうだった。ピグリンには固有名詞がない。じゃあまたこっちで名付けるパターンか? としばらく悩んでいると、クロスボウ兵が不思議そうに問い掛けた。