第9章 危機一髪
俺は剣を手に取った。迎え撃つのだ。
「来い、ファントム……!」
「ギィヤァア!」
俺の挑発に乗るかのように雄叫びを上げたファントムは、一瞬低く下降してからこちらに突っ込んで来た……!
「王を守れ!」
直後、ゴエイくんの大声がどこからかに聞こえた。俺は視線を逸らす訳にもいかないまま剣を振り下ろし、ファントムの片翼に命中した。ファントムはそのまま攻撃体勢を崩して空中でよろめき、その隙に地上から一矢が飛んできてそいつにトドメを刺した。
「ギィア……」
ファントムは断末魔を残しながらのたうち回ってデスポーンした。倒れ方はまるでリアル過ぎて背筋が凍る。俺はよく見ないようにして地上に矢を放ったピグリン兵を見やった。
ピグリン兵はクロスボウを下ろしてこちらに敬礼をした。ありがとうと感謝を伝えるのはあとにして巣へと振り返ると、そこには穴から引き上げられて座り込んでいる子どもピグリンと、俺に向かって強く頷いたゴエイくんが立っていた。
「助かってよかったよ」
巣に戻って俺がそう言うと、ゴエイくんは謙遜にこう返した。
「いえ。貴方がファントムの気を引いてくれたおかげで少年を助けることが出来ました。ありがとうございます」
「俺はファントムに狙われただけだけどな」
あの時、ゴエイくんが的確に兵に指示を出してもらっていなければ、今度こそここから真っ逆さまに落ちていたのだろうと思うと、俺は本当に心から感謝をしていた。ゴエイくんは嬉しそうにニコリと笑った。なんだかだんだんとゴエイくんの表情が豊かになっていっている気がして、少しは俺に打ち解けたんだろうかと考えた。