第9章 危機一髪
「少年、どういうことなんだ……?」
子どもピグリンにそう問い詰めたのはゴエイくんだった。
その他のピグリン兵たちは周りを警戒しながら子どもピグリンを囲っている。ファントムの羽ばたき音がわずかに聞こえるし、早く出ないと危ない気しかしないんだけど、目の前の子どもピグリンはゴエイくんの手を叩き落とし、目にも止まらない早さで走り出して隣の巣へと飛び込んだ。
「あ、待ちなさい!」
ゴエイくんは子どもピグリンを追い掛けて隣のファントムの巣へ走る。俺も仕方なく追い掛けると、次には悲鳴が聞こえた。
「うわぁ?!」
あろうことか、ファントムの巣には穴があったらしい。勢いよく走り出した子どもピグリンはよく足元を見ずにその穴へずり落ち、下半身は巣の真下へと飛び出した。
「少年、今助けるからな!」
正義感が強いのだろうゴエイくんが真っ先に子どもピグリンの元へ駆けつける。だが少年は仕切りにゴエイくんの手を払い、やめろと騒ぎ立てている。
俺はすぐにファントムの巣から飛び出し、ブロックを横に伸ばした。急げば子どもピグリンの足元にブロックを置いて足場を作れるかもしれない。こちらに気付けば子どもピグリンが何をするのか分からないので、そのままゴエイくんの方に気を取られていてくれ、と願いながらブロックを置き続けていた時に、それは聞こえた。
「ギィアア……!」
甲高い咆哮。
俺が視線を向けたと同時に青い翼が横腹を体当たりしてきた。
俺は片足がブロックからずり落ちかけたがなんとか持ちこたえ、地上からの高さに一瞬目が眩みながらもぶつかってきたファントムを見やった。
ファントムは咆哮を上げながらくるりと旋回し、攻撃体勢をとった。一旦引き返した方がいいのかとも考えたが、向こうでは子どもピグリンがどんどんと落ちようとしていたのも視界の端で捉えた。引き返したら、子どもピグリンの救出が間に合わないのかもしれない。