第8章 ファントムの巣
ファントムの巣までの道はないので、俺たちはブロックを積みながら進むことにした。
デフォルトのゲームと違って、ピグリンたちは各々ブロックを扱うことが出来るので、バラバラの方向からファントムの巣へ潜入し、中にいる子どもピグリンを助け出そうという作戦になったのだが。
周りを飛び回るファントムが、いつ俺たちに気付き襲ってくるか予想がつかない。
せり上がった地形に身を隠しながらブロックを積み、遠距離攻撃出来るピグリンはもしものためにと地上で控えてもらっている。あとはファントムの巣へ向かうだけだ。
「あの巣の主が帰ってくる前に急ぎましょう」
近くでブロックを積んでいるゴエイくんが小さく叫んだ。俺は頷いた。
それからゆっくりと、ファントムの巣の手前までやって来た。青いガラスブロックで出来たそれは、二発殴った程度で簡単に割れた。
見れば周りのピグリンたちも素手でガラスブロックを破壊していたので、どうやらいつもの俺たちと同じく、ブロックを集める以外にツルハシを使う習慣はないみたいだ。
「うわぁ、なんでこんなところにアイアンゴーレムがいるんだよ?!」
いち早くファントムの巣に辿り着いた俺の顔を見るなり、中にいた子どもピグリンがそんな驚いた声を上げる。無理もない反応だ。
「俺はアイアンゴーレムじゃなくておんりーだよ」
「おんりー……?」
子どもピグリンが首を傾げている間にゴエイくんたちも巣に入って来て声を掛けた。
「そのお方は我が国の王であられる。さぁ、危ないから早くここを出よう──」
とゴエイくんが子どもピグリンに手を差し伸ばしたが。
「嫌だ!」子どもピグリンが後退した。「オレ、ファントムの皮膜を持って帰るまでここから出ないからな!」
なんだか面倒なことになりそうな予感がした。