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マネージャーの推しごと

第1章 出会い



やばいやばいやばいやばい
今私は全速力で体育館から走り出して混乱する頭を整理している。
自己紹介しようとしたのに、なんだよ顔がいいって。
せめてもうちょっと、かっこいいですねとか、すてきですねとかあったはずなのに恥ずかしい通り越して失礼すぎる。初対面の先輩に向かって失言した挙句に逃げ出して来てしまったのだ、絶対引かれた。マネージャーどころではない、この体育館に近づくのも無理なのでは??いやむしろ明日から学校来れる??さらば私の初恋。
そんなことを考えながら走っているとドンっと誰かにぶつかってしまった。
「っ!ごめんなさい!…って山本くん」
「いや、俺も前見てなかった、わりぃ……苗字どうした?なんかあったか?」
ぜぇぜえと肩で呼吸を整える私を心配して山本くんが尋ねた。
ものすごい距離を走ったと思ってたけど、体育館から部室までの道で自分の運動音痴さを実感する。

「山本くんごめん、やっぱり私マネージャーできない…」
「?なんで!!?なんか嫌なことされたか!??」
怒るより先に心配してくれる山本くんに申し訳なさがいっぱいになる。
「ちがっ!そうじゃなくて…!」
「理由聞かせてくれよ」

言い淀んだ私をじっと見て理由を話せと迫ってくる。彼はきっと私が何か嫌な事をされて逃げて来てマネージャーなんかやりたくないと言っているのだと思っている。こんな私を本気で心配してくれている、そういう人だ。このまま私が何も言わなければ彼はチームメイトを疑うことになってしまう。それだけはなんとしてでも避けたい。恥ずかしいけれど正直に言うしかない。
「あの…黒尾先輩が………かっこよすぎてむりです。」
「は?」

うん、ほんと「は?」だよね。私もそう思う。
「顔が良すぎる。思わず顔がいいって先輩に言って逃げてきました。
目元がえろいあの顔で迫られたい声もいいし筋肉のバランスもいい汗かいてもいい匂いしそうだし黒Tシャツ似合いすぎだし、あ、手にマメあったな触りたいな、爪きれいだったなさすがバレー選手だよねあ、それからそれから」
「苗字ってたまにすげぇ残念になるよな…」
「ぶっひゃひゃ!!」
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